はじめに
個別銘柄の選択に関して、私が投資対象としているKDDIで実践例を紹介します。
有望そうなセクターを選択する
大手通信キャリアに関して、私の見方は以下の通りです。
・高い参入障壁が期待できる
・国内での安定需要が期待できる
次に、数値上の裏付けを行い、投資対象の銘柄を選択します。
効率的に、かつ、少ない借金で稼いでいるか
同業他社と比較して、パフォーマンスが優れている企業を選択します。
マネックス証券の銘柄スカウターで銘柄比較を行います。
銘柄名 (銘柄コード) | KDDI (9433) | 日本電信電話 (9432) | ソフトバンク (9434) |
---|---|---|---|
ROE(自己資本利益率) | 13.41% | 14.40% | 27.25% |
ROIC(投下資本利益率) | 10.87% | 7.36% | 10.19% |
自己資本比率 | 43.0% | 33.8% | 15.2% |
ROEと自己資本比率とともに、ROICを参考にすると、KDDIが最もバランスに優れていると思います。
次に、各年度の有価証券報告書より、分析対象の数値をExcelに入力し、業績の推移を確認します。
また、計算式により各指標を求めます。
なお、有価証券報告書は、金融庁のEDINETで参照できます。
売上高が増えているか
毎年連続で増えています。
売上総利益率と営業利益率が安定または改善しているか
売上高に対する売上総利益の比率を計算して、売上総利益率を求めます。
売上高に対する営業利益の比率を計算して、営業利益率を求めます。
売上総利益率と営業利益率とも、一貫して高い水準で安定していると思います。
売上総利益に対する研究開発費の比率が適切な水準か
有価証券報告書の「研究開発活動」より研究開発費を入力します。
売上総利益率に対する研究開発費の比率を求めます。
極めて低い水準です。
営業利益に対する支払利息の比率が低い水準か
営業利益に対する支払利息の比率を求めます。
極めて低い水準です。
キャッシュフローが良好か
営業CF(営業活動によるキャッシュフロー)、投資CF(投資活動によるキャッシュフロー)、財務CF(財務活動によるキャッシュフロー)を入力します。
営業CFから投資CFを差し引いて、フリーCF(フリーキャッシュフロー)を求めます。
営業CFより、本業でしっかりと稼いでいると認められます。
また、フリーCFも良好だと思います。
株価が適正な水準か
マネックス証券の銘柄スカウターで指標を確認します。
予想PER | 株価 | 予想1株当り利益 |
---|---|---|
12.3倍 | 3,856.0円 | 312.8円 |
将来のリターンをシミュレーションします。
まず、現在の3年、5年、10年の平均成長率を確認します。
当期利益 | |
---|---|
3年平均成長率 | 2.9% |
5年平均成長率 | 4.2% |
10年平均成長率 | 10.9% |
近年、成長率が鈍化しているように見えます。
スマートフォン普及率の推移から、要因を推測します。
総務省の下記サイトより、スマートフォン普及率の推移を確認します。
過去、急激に増えた時期がありますが、現在は成熟期だと思います。
今後、スマートフォン事業に関して、大きな成長が見込めないと思います。
ただし、スマートフォン事業で安定収益が期待できると思います。
一方、スマートフォン以外の事業で、一定の成長が期待できるかもしれません。
想定する10年平均成長率に関して、現在の3年平均成長率である2.9%を採用します。
以下のような計算式で、株価シミュレーションを行います。
項目 | 計算式 |
---|---|
利益の想定倍数 | 現在を1として、前年の倍数+前年の倍数×10年平均成長率 |
想定する1株当り利益 | 現在の予想1株当り利益×利益の想定倍数 |
PER10倍での予想株価 | 想定する1株当り利益×10 |
10年後の予想株価 | 10年後の予想損益率 | |
---|---|---|
PER10倍 | 4,163円 | 8% |
10年後、想定通りの低成長ならば、キャピタルゲインが物足りないと思います。
※あくまでも、想定に基づくシミュレーションであり、必ずしも将来を保証するものではありません。
次に、インカムゲインをシミュレーションします。
昨年の配当性向は以下の通りです。
配当性向 | |
---|---|
2022/03 | 41.7% |
また、KDDIの下記サイトでも、「配当性向40%超」を掲げています。
配当性向40%で、配当金シミュレーションを行います。
10年後の配当金累計(1株当り) | 10年後の予想株価(PER10倍)+配当金累計 | 10年の予想損益率(キャピタルゲイン+インカムゲイン) |
---|---|---|
約1,594円 | 5,757円 | 49% |
数値を分析した結果
分析結果をまとめると、以下の通りです。
・同業他社と比較して、効率的、かつ、少ない借金で稼いでいる
・売上高が毎年連続で増えている
・売上総利益率と営業利益率が、一貫して高い水準で安定している
・売上総利益に対する研究開発費が極めて低い水準である
・営業利益に対する支払利息が極めて低い水準である
・キャッシュフローが良好である
上記の理由により、KDDIに関して、長期的な安定性が期待できると判断します。
※あくまでも私の判断であり、必ずしも正しいとは限りません。
財務諸表の分析で活用している書籍
財務諸表を読むにあたり、下記の投稿にて、私が活用している書籍を紹介していますので、よろしければ参照して下さい。
個別銘柄リスクへの対応
個別銘柄リスクへの対応として、以下の手法を採用しています。
・ポートフォリオの10%以内に抑制
・単元未満株取引で少額投資
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